給与所得のある会社勤めの方には馴染みの深い「源泉徴収」。フリーランスの方でも、源泉徴収されることはあるかご存知ですか? そもそも、源泉徴収とはどのようなものかご存知でしょうか?
この記事では、源泉徴収の定義やフリーランスの源泉徴収対象、源泉徴収の計算方法などを解説いたします。
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源泉徴収ってなに?
まずは、源泉徴収の定義から確認しておきましょう。
源泉徴収とは、会社や個人が、雇っている人に対して給与などを支払う際に、あらかじめ所得税相当分を差し引く制度を指します。差し引かれた所得税相当分は、個人に代わって支払元の会社や個人が納税することになります。
会社勤めの方の場合、給与の額面と実際に受け取れる手取額に差があると思いますが、その差額のなかに源泉徴収分も含まれているわけです。
では、フリーランスの方の場合、会社や個人に雇われているわけではないですが、源泉徴収は発生するのでしょうか。
フリーランスも源泉徴収されてる!? 源泉徴収の対象となるもの
会社や個人に雇われているわけではないフリーランスの報酬であっても、実は、源泉徴収される場合があります。どのような場合に源泉徴収されるのでしょうか。
給与以外に源泉徴収の対象となる項目は全部で8つありますが、そのなかでもフリーランスの報酬に関わる項目は以下の2つです。
【源泉徴収の対象となるフリーランスの報酬】 | |
1.原稿料や講演料など | 本や雑誌、WEBページ記事の執筆に関わる原稿料やセミナーなどの講師料が該当します。デザイン料や作曲料もこの項目に含まれます。 |
2.弁護士、公認会計士などの特定有資格者に支払う報酬・料金 | 弁護士、公認会計士、司法書士、税理士などの国家資格を持つ方に支払う報酬や、中小企業診断士や経営コンサルタントに支払う料金が該当します。 |
これらの仕事を「源泉徴収義務者」から請け負っている場合は、報酬から源泉徴収が発生します。源泉徴収義務者とは、源泉徴収を行なって報酬受取人に代わりに納税する義務を負った人や組織のことで、基本的に個人に対して報酬を支払う場合は、源泉徴収義務者になります。
ただし、以下の条件に当てはまらる場合は、源泉徴収の義務がなくなります。
【源泉徴収の義務対象外の条件】 |
1.常時2人以下の家事使用人にのみ給与・退職金を支払っている場合 |
2.給与・退職金の支払いがなく、報酬・料金のみを支払っている場合 |
例えば、個人から個人への業務依頼は項目2に該当し、源泉徴収する義務はなくなります。ご自身の報酬内容が、源泉徴収されるものに該当するのかをしっかり確認しておく必要があります。
源泉徴収額の計算方法
報酬から源泉徴収がされていた場合、計算ミスがないかを確認する必要があります。なにより、確定申告時に源泉徴収で差し引かれた額(既に納めた税額)を申告する必要があります。
源泉徴収されているのに申告しなかった場合、二重で納税することになってしまうため、しっかりと源泉徴収額を把握しておくことが重要です。
それでは、源泉徴収額の計算方法を確認していきましょう。源泉徴収の計算は、報酬金額が100万円を境に変わります。
【100万円以下の場合】
・源泉徴収額 = 報酬金額 × 10.21%
例えば、報酬金額が50万円であれば、源泉徴収額は「50万円 × 10.21% = 51,050円」となります。
【100万円を超える場合】
・源泉徴収額 = (報酬金額 − 100万円)× 20.42% + 100万円 × 10.21%
100万円までは10.21%、100万円を超える部分には20.42%が掛けられるわけですね。
例えば、報酬金額が200万円の場合、源泉徴収額は「(200万円 − 100万円)× 20.42% + 102,100円 = 306,300円」となります。
※報酬金額の考え方
報酬金額は、消費税込みで計算する場合と消費税抜きで計算する場合があります。報酬金額が消費税込みの合計金額しか記載されていない場合は税込額で計算されており、税抜価格と税額が分かれて記載されている場合は税抜額で計算されています。
源泉徴収額は還付される? 確定申告を忘れずに
たとえ全ての報酬が源泉徴収されているからといって、確定申告しなくていいわけではありません。源泉徴収は、あくまで概算で所得税額を計算しているにすぎず、確定申告時に課税所得額を基に計算した税額が、本来納めるべき納税額となります。
仮に、源泉徴収総額が本来の納税額を超えていた場合、超えた分はしっかりと還付されます。課税所得が195万円以下の所得税率は5%、課税所得が195万円超330万円以下の場合の所得税は10%となっていますので、確定申告をすれば還付されるというフリーランスの方も多いのではないかと思います。
納税義務を果たすため、そして自分が損しないために確定申告は期限内に確実に行ないましょう。