
脳内に浮かんだアイデア、忘れそうなタスク、ふと気になった言葉──それらを一度“避難”させておく場所。それが「メモ帳」です。TODOリストやスケジュールのように即座に処理されるものではなく、思考の断片をそのまま受け止めてくれる「情報の器」として、メモ帳はフリーランスの手帳術において不可欠なパーツです。
前回、「【フリーランスの手帳術】忘れを防ぐ「トリガーリスト」の使い方」公開してきましたが、今回はそれ以外のメモ帳等の手帳術を紹介していきます。
白地の紙に横罫線の入ったメモ用紙。言わば、手帳術における最重要セクションと言えます。
フリーランスの手帳術(全10記事)
🟢 フリーランスの手帳術
📌 頭の中を見える化し、時間と集中力を最大化するための思考整理術
├─ 【フリーランスの手帳術】価値観と目標の描き方
├─ 【フリーランスの手帳術】価値観と付加価値を理解する
├─ 【フリーランスの手帳術】未来年表でブレない自分をつくる
├─ 【フリーランスの手帳術】未来年表から年間スケジュールを作る手順
├─ 【フリーランスの手帳術】年間計画を月間スケジュールに変える技術
├─ 【フリーランスの手帳術】週間スケジュールで行動を最適化する技術
├─ 【フリーランスの手帳術】TODOリストで第二領域を見逃さない
├─ 【フリーランスの手帳術】迷いを消す!フリーランスのチェックリスト術
├─ 【フリーランスの手帳術】忘れを防ぐ「トリガーリスト」の使い方
└─【フリーランスの手帳術】メモ帳は「思考の器」であり第二の脳
メモ帳は「思考のカオス」を育てる器

メモ帳は単なる記録欄ではありません。フリーメモやアイデアメモを“汚く”書きなぐることで、新しい発想が生まれる「思考の母体」として活用します。
フリーメモとアイデアメモは「未整理でいい」
インプットは混沌でOK。むしろ構造化しないことで、自分の考えや感情を制限せずに書き出せます。マインドマップや落書きのように、思いつきを放出する場所として機能させましょう。あとで清書ノートへ整理すれば、必要な情報だけを引き上げられます。
「やった感」と「再発見」を残す仕組み
書き殴った汚れたページには、「ここまで考えた」という証が残ります。あとから見返したときに過去の自分のアイデアがヒントとなり、別の案件やフェーズに再利用できることもあります。また、通勤中などに手帳をパッと開いて思考を再開できる点も、紙のメモ帳ならではの強みです。
メモフリーセクション

私は気になる情報や頭に浮かんだことなど、全てこのフリーセクションに書き込んでいきます。
各セクションの中でも、このフリーセクションが、もっとも分厚いセクションになっています。なぜなら、忘れ去られた過去の情報が、いきなり必要になる頻度が高いため、なかなか整理できないからです。
例えば、くだらない内輪話で言った言わないの問題になっても、大抵ここに書いてあるので見返せば決着が付くことが多いです。
また、アイデアを創出する場合にもこのセクションを活用します。
閃いたアイデアはその瞬間に書き留めておかないとすぐ忘れます。寝起きがけに「さっきまで夢を見ていたのは覚えているが、なんの夢だったかは覚えていない」なんてことよくありますよね?アイデアも全く同じですぐに忘れてしまうのです。
そして、手帳のフリーセクション(メモ)を使ってあーでもないこーでもないと苦しみながらアイデアが創出された頃には、見るも無残なメモの姿があります。 誰が見ても理解不能な状態だったりします(笑
「自分さえ理解できれば良いのでは?」と言われてしまいそうですが、一時経つと書いた本人さえも解読不能になってしまうほどの状態です。
これでは何のために無い知恵絞って考えたのか分からなくなってしまいます。
以上の理由から、下書き用のラフにフリーセクション(メモ)、別の清書用にアイデアセクションを設けています。

創出したアイデアは冷めないうちに清書します。綺麗に書き上げると非常に満足します(笑
アイデアを創出する行為は非常に苦しい作業です。無から生み出す苦労を体験したことのある方なら理解できると思います。某大手メーカーの中には、形にするまでのアイデアを現金で買ってくれる所があるほどです。
逆にアイデアセクションまで来てしまえば、後は非常に楽な作業になります。形を持ち始めたアイデアは、他のアイデアと組み合わせて進化させることが容易だからです。
日本人は「大量のデータの中から間違えを探すこと」には慣れているが、「大量のデータから足りないものを探す」ことは苦手です。
後々何かの約に立つであろうことを祈って、思いつく都度、手帳に書き込んでいます。
たわいのないアイデアですが、こういったアイデアを組み合わせると想像もしていなかったアイデアを思いつくことがあるのです。
清書ノートと情報セクションとの役割分担
メモ帳の内容はすべて再利用されるわけではありません。構造を持たせる段階で「清書」や「情報」として整えていきます。
清書ノートは「構造化されたアウトプット」
思考を再整理し、プロジェクトの設計や概略図として使います。メモ帳で出たアイデアや思考を、ロジックや構造を意識して再構成する場です。
情報セクションは「汎用チートシート」
Vimショートカットやポート番号など、どの案件にも共通して役立つ情報を蓄積しておくエリアです。設計や発想ではなく、操作や定数の再確認に役立ちます。
清書ノートと情報セクションの住み分け
項目 | 内容 | 用途 |
---|---|---|
清書ノート | プロジェクト内で再利用する構造的メモ | 個別設計、エスカレーション体制など |
情報セクション | 共通で使える技術・操作系チートシート | Vimコマンド、ポート番号など |
情報セクション
私はこの情報セクションに「【フリーランスの手帳術】迷いを消す!フリーランスのチェックリスト術」や「【フリーランスの手帳術】忘れを防ぐ「トリガーリスト」の使い方」の内容を印刷して、システム手帳へ挟み込んでいます。
例えば、ネットワークで使用するTCPのポート一覧や忘れがちなvi(UNIX系エディタ)コマンド一覧などです。
これらはテキストで管理することによってデータベース化されてもいるのですが、出先などで急に必要になった時用のため手帳で管理しているわけです。
特に現場がデータセンターの場合は、申請無しでスマフォやPCなどを持ち込めないことが多い為、紙の印刷物が大いに役立ちます。
行動管理から情報セクションまでを一冊の手帳で管理すると、さすがにその規模は相当なボリュームになります。外回りの営業職にはちょっと厳しいかも知れません。
しかし、エンジニアの私にはあまり問題にならないレベルなため、これでも何とか続いているといった感じです。

この情報セクションには上記で触れた一覧の他にネットワーク構築における人件費の算出方法や、見積もりに必要な情報なども管理されています。その他、設計や構築段階で何をしなければいけないか等、部下に指示する内容などもすべて管理されています。
新人などが部下に入ってくると、手取り足取り教えながら作業をこなしていかなければならないことが多い為、あらかじめ壁になるであろうポイントを情報セクションに管理しておき、その時点で必要な詳細ファイルを悩んでいる部下に手渡すことで時間の短縮を図ることが出来ます。
最近思うのですが、これをうまく使うことで部下に限らず派遣の女の子などでも、戦力に変える力があったりする気がします。
一説によると情報を武器として最初に戦った武将は、あの織田信長と言われています。しかも、当時地球が丸いことを理解した最初の日本人だって言うから相当な者だったことは疑いの余地もありません。
それまで戦国時代においては、大将首を討ち取る以外に一国一城の主になることができなかったそうですが、織田信長は敵の大将や敵陣地の地形など発見・解析した者に一番首以上の褒章を与えたそうです。
国取合戦に情報を武器として取り入れ、新たな戦術として編み出した瞬間ですね。そして、時は流れて現在のビジネスウォーまでこの情報戦が続いています。なんとも壮大な話ですね。
今日まで手帳術を紹介してきました。しかし、経験上最も重要なのは、今まで掲げてきたような情報管理ではないのです。それ以上に、まず「うごく」こと!行動なくして結果なし。
この年になると 「行動」+「知恵」=「結果」と言うことを身に染みて感じます。まず行動すること。
そうすれば、先の世界は必ず開けます。手帳術をうまく駆使して大いに立ち回って欲しいと思います。
メモ帳が持つ「再確認」の価値
メモ帳は再利用だけでなく、「通勤中に思考を再開する」「抜けを見つける」など、思考の再点火にも役立ちます。一度記録した情報を見返すことで、新たな発見や改善ポイントを引き出すきっかけになります。
紙媒体だからこそすぐ開ける強み
紙の手帳やノートであれば、アプリを立ち上げる時間も不要で、パッと開いてすぐに思考を再開できます。デジタルだと “構え” が必要な分、発想の瞬発力が損なわれることも。思考の連続性を維持するなら紙媒体の即応性が強みです。
「足りないもの」に気づくツールとして
日本人は「間違い探し」には強くても、「足りない要素」に気づくのは苦手とされます。メモ帳を通じて過去の思考をなぞることで、まだ書かれていない項目や必要な視点に気づけるようになります。
メモ帳は「書き殴り」から価値を生む
メモ帳は単なるメモ欄ではなく、思考の断片を逃がし、新しい発想を生むための“思考の母体”です。情報が未整理のままでもいい。むしろ未整理だからこそ、のちに組み合わせたり再構築したりする「素材」として機能します。
清書ノートや情報セクションに転記することでアウトプットとして整理されていく一方、書きっぱなしのページから「やった感」や「再発見」が得られるのも紙の強みです。
再読性や再利用だけに目を奪われず、「いま思ったことを書き出す」行為そのものが、次の思考の土台になります。メモ帳は“整えるために書く”のではなく、“ぐちゃぐちゃでも書くから整ってくる”ものです。