「何をやるべきか」はわかっているのに、なぜか動けない。
フリーランスの現場では、そんな“迷い”が命取りになることがあります。
そこで活躍するのがチェックリスト。
タスク管理ともTODOリストとも違う、「行動の再現性と安定性」を担保するツールです。
この記事では、チェックリストの本質と、使いどころ、導入のコツまで解説します。
フリーランスの手帳術(全10記事)
フリーランスの手帳術
頭の中を見える化し、時間と集中力を最大化するための思考整理術
├─ 【フリーランスの手帳術】価値観と目標の描き方
├─ 【フリーランスの手帳術】価値観と付加価値を理解する
├─ 【フリーランスの手帳術】未来年表でブレない自分をつくる
├─ 【フリーランスの手帳術】未来年表から年間スケジュールを作る手順
├─ 【フリーランスの手帳術】年間計画を月間スケジュールに変える技術
├─ 【フリーランスの手帳術】週間スケジュールで行動を最適化する技術
├─ 【フリーランスの手帳術】TODOリストで第二領域を見逃さない
├─ 【フリーランスの手帳術】迷いを消す!フリーランスのチェックリスト術
├─ 【フリーランスの手帳術】忘れを防ぐ「トリガーリスト」の使い方
└─【フリーランスの手帳術】メモ帳は「思考の器」であり第二の脳
チェックリストは「再現性の武器」である
計画や思考を何度も繰り返すのは非効率です。チェックリストとは、一度決めた「成功パターン」や「確認手順」をそのまま再利用できる仕組みです。
フリーランスの現場では、判断ミスや見落としが致命的なロスを生むことも。そこで役立つのが、判断や記憶に頼らないチェックリストという補助装置です。
手帳術におけるチェックリストの位置づけ
TODOリストや週間スケジュールが「これからやるべきことの管理」だとすれば、チェックリストは「いつも同じように確認すべきことの管理」です。
つまり、タスク管理ではなく“思考の省略”。何を確認するか、どういう順序で実行するかをあらかじめ固定しておくことで、判断の手間を減らします。
「よくある業務」を省力化する考え方
メールの送信、納品対応、請求処理、外出準備など、フリーランスの仕事には“繰り返し出てくる”業務が多くあります。
これらを毎回ゼロベースで考えていては、脳のリソースが消耗します。「この業務のときはこの項目をチェックする」という型をつくっておくことで、作業の精度とスピードが一気に上がります。
「思考の省略」と「行動の精度」を両立させる
チェックリストの真価は、「頭を使わなくていい」という点にあります。人はミスをするものですが、その多くは「知っていたのに忘れていた」ことが原因です。
書いてあるからこそ、抜けが防げる。頭で覚えておかなくていいから、ほかの重要な判断に集中できる。この“負荷の軽減”こそがチェックリスト最大の効能です。
チェックリスト導入で変わる3つのこと
チェックリストを導入することで、仕事の仕組みそのものが変わっていきます。具体的には、以下の3点で大きな効果があります。
- 判断スピードの向上:一つ一つ考えなくても「次に何をすべきか」が明確
- 実行精度の向上:ミスや抜けが減り、成果物の安定感が増す
- 外注・共有が容易になる:頭の中のノウハウが見える形になるため、他者に伝えやすくなる
単なる「確認項目」では効果が薄い理由
チェックリストを作ったのに使われない。そんなケースの多くは、「書いてある意味が伝わらない」構成になっていることが原因です。
「メール確認」「資料送付」など、表面的な言葉だけではなく、そのチェック項目が何を防ぐためにあるのか、どのタイミングで行うのか、明確に記載されていることが重要です。
一目で“意味”が伝わるリストでなければ、現場では機能しません。
チェックリストを「使える形」にするコツ
チェックリストは「書いたら完成」ではありません。使い続けられる形に整えることで、初めて本来の力を発揮します。現場で使えるリストにするための設計ポイントを押さえておきましょう。
使う前提で書く → アクション動詞を入れる
「確認」「資料」「対応済み」…そんな曖昧な言葉だけでは行動にはつながりません。
チェックリストは“何をどうするか”を即座にイメージできる形が基本。「確認する」「送信する」「記入する」「連絡する」といった、アクションを示す動詞で明確化しましょう。
1ページに1チェックリストが基本
あれこれ詰め込まれたリストは、実際には使われません。「どれに目を通せばいいか」が瞬時にわからなくなるからです。
用途別に分けるのが鉄則。たとえば「請求処理用」「Zoom打ち合わせ準備用」など、1テーマ1リストで管理しましょう。見返すスピードも上がり、ミスも防げます。
紙かデジタルか? 使いやすさ優先
チェックリストは「すぐ確認できる」ことが命です。どちらが優れているかではなく、「あなたが確実に使える方」を選びましょう。
デジタルなら複製や共有が容易で、テンプレート化しやすい。紙なら即座に開けて、ペンひとつで対応できます。使い方・環境・好みに応じて、運用しやすい形式を選択してください。
フリーランス向け!おすすめチェックリスト例
ここでは、ビジネス現場でそのまま使えるチェックリストの例をご紹介します。まずは自分に合ったものを取り入れて、少しずつカスタマイズしていくのが効果的です。
毎朝確認したい「スタートアップリスト」
朝イチのルーティンを整えることで、1日の流れがスムーズになります。以下のような項目があると便利です。
- カレンダー・予定確認
- メール・チャット確認
- タスク・TODOの優先度チェック
- 前日の未完了項目の繰越
納品・提出時に役立つ「納品チェックリスト」
クライアントワークでの信頼構築に欠かせないのが「抜けのない納品」です。以下のようなチェックリストがあると安心です。
- ファイル名・バージョンの整合性確認
- 動作・表示の最終確認
- 依頼内容との照合(仕様書確認)
- 納品メールの文面確認
外出前や出張前に効く「持ち物チェックリスト」
対面業務や出張が多い方は、直前の忘れ物を防ぐためのリストが役立ちます。
- 名刺・筆記用具・資料一式
- バッテリー・充電ケーブル類
- 移動ルート・乗車券などの確認
- クライアント先の情報控え
請求や税務にも使える「月末処理リスト」
毎月の処理を「チェックリスト化」しておけば、月末のバタつきを抑えられます。
- 請求書の発行と送付
- 入金の確認
- 経費の精算・レシート管理
- 帳簿・売上記録の記入
自分専用のリストを育てていく

チェックリストは「既製品」ではなく、自分の現場や思考パターンに最適化された“専用の型”を目指すことが理想です。テンプレートからスタートし、現場で使いながら進化させていきましょう。
リストは完成ではなく進化するもの
どんなに丁寧に作っても、最初のリストは必ず抜けや無駄があります。現場で実際に使う中で、「あ、これ忘れてた」「これは不要だった」が見えてきます。
その都度修正していくことで、リストの精度が上がり、“あなた専用の最強テンプレ”へと進化していくのです。
最初は小さく、使いながら育てよう
完璧なチェックリストを作る必要はありません。むしろ「使わないリスト」は存在しないのと同じです。
大切なのは、まず一歩踏み出すこと。項目が3つだけでも構いません。何度も使いながら修正を重ねていくことこそ、チェックリストを「武器」に変える最大の秘訣です。
私の場合、下記で紹介するチェックリストを作成し手帳に挟んであります。
仕事などで「現時点で考えておかねばならないことは何か?」など、あらかじめリスト化しておき、進む方向にブレが起きないようにしてあります。
これを、毎日定時に見返すようにするだけで、漏れが無いかが把握できると言う具合です。
新規のプランや事業を起こす場合に下記のビジネスチェックリストを使用することで、意思決定判断までの時間を短縮しています。
ビジネスチェックリスト例(Bepro式)
フリーランス(個人事業主)をしていると、いろいろな話が持ち上がってきます。
大抵の場合はプロジェクトで課題にハマっている時などに決まってビジネスの話が舞い込みます。とても正常な判断が出来ないほど疲れ切っている場合、間違った判断で損することが多く何かいい手はないかと模索していたところ、このチェックリストに辿り着きました。
プランニングチェックリスト
毎年末に翌年の年間計画を立てる都度、振り返りと計画策定に使用します。
「自分にとって価値あること」に優先順位をつけ、より多くの時間とパワーを注げるようにスケジュール化するための設計フレームワーク。
プランニングチェックリスト
- 人生ミッションリスト(年末作業)
- 価値観・ミッション、自分が大切にしていることを明確にする
- 価値観の明確化
- 周囲のいろいろの人の中で、自分の役割を考える
- 自分のミッションを考える
- 価値観・ミッション、自分が大切にしていることを明確にする
- 目標に対する優先順位を明確化する(年末作業)
- 自分にとって価値あるもの、したいことの優先順位を明確化する
- 老後に「こうで在りたい自分」像
- やりたいことリスト
- してはいけないことリスト
- 自分にとって価値あるもの、したいことの優先順位を明確化する
- 未来年表(年末作業)
- 最低、向こう10年間の長期的な目標の具体的なプランを立てる
- 目標を列挙し、ゴール地点(達成日時)を視覚化(数値化)する
- 現状と目標の距離を見定める
- 進まなければならない距離を達成日時までの年月で振り分ける
- 今年の重点目標(年末作業)
- 未来年表から今年の目標と反省点を明確にする
- それに向かって行う予定期間を「月間スケジュール」へ落とし込む
- 週間スケジュール(習慣ルーチン)
- 毎週末に月間スケジュールの当該目標を週単位にブレイクダウンし、「週間スケジュール」へ落とし込む
- 今週の作業で未達成の項目を抜出し、次週の作業として「週間スケジュール」として組み込む
- 「1週間コンパス」を使って、その週で自分の役割と目標を立てる
- 日々の予定
- 常に1週間単位での進捗を意識し、毎日業務終了後に1日の業務内容を振り返る
- 日の振り返り/日次レビュー
- 週間計画で立てた目標や行動計画に対して、どのぐらい実行できたかを振り返る
上記の計画を1週間のサイクルとしてPDCAを回します。
行動チェックリスト
毎日の終わりにその日取った行動の振り返りを行います。
その日行った行動を振り返るための簡易フレームワーク1日の行動計画に対するオールラウンドチェックリスト。
行動チェックリスト
- 計画的行動
- 手帳のTODO&スケジュールを朝・昼・晩に読み返したか
- 今日1日の行動予定を立ててから行動したか
- できる人間のオーラを発する
- 常に「キリッ」とした顔、もしくは「ニコッ」とした笑顔だったか
- 姿勢を正しく背筋を伸ばしていたか
- 低くゆったりした声で話していたか
- 他者の感情に敏感になる
- 物事の優先順位は「関係者がどう思うか」を基準にしたか
- 人と会う前、会っている最中に「この人の求めている(期待している)モノは何か」を考えたか
- 「期待を超える何か」を提供しようと考えたか
- クイックアクション
- 今日した方が良いことを、明日の先延ばししていないか
- 明日に済ますべきことを行う準備はできているか
- 期限の直前2日になっている仕事はないか
- 自我を保つ
- 自分の意見を言えるシーンで、自分の「考え・要求」を伝えているか
- 規則正しい生活⇒高いエネルギー
- 朝、定時に起きたか
- 朝食・昼食・夕食は適切な時間にとったか
- 夜、定時にねる準備は出来ているか
- 密なコミュニケーション
- 報告・連絡・相談で漏れているものはないか
- 隙間時間に本、CDなどで学習したか
- その日にあった人・モノからの学びはあったか
- 日々を学習する
- 「何を学習するか」テーマを明確にしたうえで、学習したか
- 隙間時間に本、CDなどで学習したか
- その日にあった人・モノからの学びはあったか
- 仕組み思考
- ムダ・ムラを無くすための仕組みつくる発想を行っていたか
- 新しいことをできる限り手間をかけずに行うアイデアを考えたか
- 既にある仕組みを十分に活用しているか
- 効率的時間活用
- 「気づいたら、時間が過ぎていた」ということがなかったか
案件チェックリスト
新規にプロジェクトへ参画する前に、必ずこのチェックリストの内容を確認し参画するかどうかを決定します。新しく仕事、プロジェクトを受ける前の確認事項など、判断を簡易化するための質問シートフレームワーク
案件チェックリスト
- 案件内容
仕事を受けるうえで、将来的に有益なものがあるか - プロジェクト・案件規模
SE・PG・その他 人数などを確認する - 現在までの進捗
設計書の制度・インフラ環境・DB環境などを確認する - 通勤
通勤にかかる時間(大復)、および目的地までの乗継回数などを確認する - 契約種類
月額固定や残業、ネクタイなどの条件を確認する - 使用言語
Java言語・PHP言語など、将来性のある言語であるか確認する - 技術動向
WEBシステムなど、将来性のある技術を使用しているか確認する - プロジェクトの優劣
リーダー、PMとなるもののシステム開発経験などを確認する - メンバー
メンバーのスキル・人間性が妥当であるか確認する - 拘束時間
無益残業の有無などを確認する - 統括者の営業経験
統括者に顧客との交渉能力があるか確認する - 行程・スケジュール
現在の行程や、カットオーバーの日程などを確認する - 別部隊の存在
本案件にインフラチーム・DBチームなどの別部隊が存在するか確認する
新規事業チェックリスト
フリーランスを長くやっていると、ちょくちょく新規事業の話が舞い込みます。このチェックリストを使用することで意思決定を簡易化しています。
新規事業に乗り出す前の確認事項に対して、判断を簡易化させる質問形式フレームワーク
新規事業チェックリスト
- 将来性はあるか
社会のトレンド等から将来のあるべき成長が想像できるか
新奇性はあるか
その商材、仕組みに付加価値が付くだけの奇抜性、独創性があるか - 成長性はあるか
その商材、仕組みに市場を形成していくだけの需要は望めるか - ナンバーワンになれるか
その商材、仕組みを使って市場を形成していくリーダーとなれるか - 特許をとれるか
その商材、仕組みで特許、ビジネスモデル特許がとれるか - 競合は何処か
同種の商材、仕組みを扱っている同業他社はあるか、またそれはどこか - 独占できるか
その商材、仕組みを使ってオンリーワンになれる可能性は望めるか - 上場できるか
その商材、仕組みを使って将来的に上場を見込める算段がつくか - 必要な人員は何人か
その商材、仕組みを使って市場を開拓していくために必要な人数は何人か - 必要な資本はいくらか
その商材、仕組みを使って市場を開拓していくために必要な資本はいくらか - 会社の価値観に沿っているか
「仕事を通じて世直し」を実施できる余地はあるか(不条理・不合理)などの観点から
事業計画チェックリスト
基本は「新規事業チェックリスト」に似ていますが、事業を「新規で始める」場合と既存の「事業分野を広げる」場合の違いにより使い分けています。
事業ドメインを明確にし、事業として確立するための事業計画質問ワークシート
事業計画チェックリスト
- 何を売るのか
今後、会社として社会で自立するにあたって、販売していくものは何か - どうやって売るのか
そのサービス・商材を如何に売り込むのか - 誰に売るのか
そのサービス・商材を販売する対象は何処か - それを如何に実現していくのか
そのサービス・商材の販売目標を如何に達成していくのか - どの部分で儲けられるのか
そのサービス・商材のどの部分に付加価値をつけ、何処で利益を得るのか - 自分の得意分野は何処か
そのサービス・商材を販売して行く上で、自分の強みは何処か - なぜ自分がそれをするのか
自分が行動を起こした目的はなにか - 商品力はあるか
そのサービス・商材自体に商品力はあるか - 時代の流れに合っているか
今後、そのサービス・商材の需要が見込めるか - 競合はどれくらいいるのか
同種のサービス・商材を扱っている同業他社はあるか、また、それは何処か - 競合と何処を差別化していくのか
そのサービス・商材を扱う中で、競合他社との差別化を図るのは何処か - 関連サービス・商材はどういう展開が可能か
そのサービス・商材に有機的に関連する展開可能なサービス・商材はあるか
プロジェクト振り返りチェックリスト
毎週末にプロジェクトを見直す対話形式フレームワーク現在までの進捗状況を確認するチェックリスト
プロジェクト振り返りチェックリスト
- 目標達成
- 標は簡単明瞭であったか?曖昧な目標ではなく、具体的な数値目標であったか?
- 目標をスタッフの全員と共有できていたか?
- 目標が期の途中で変えられることはなかったか?
- 目標は達成できたと思うか?
- リスク管理
- このプロジェクトが失敗するとはどんな状態になったときだろうか?
- そのような状態に陥る危険が発生するのはどんなときだろうか?
- リスクに対する備えはどんなことができただろうか?
- 失敗するかどうかという境界を把握できていただろうか?
- 費用対効果
- 求められる効果、結果とはどのようなものであったか?
- 効果の検証はどのように行ったか?あるいは行う方がよかったか?
- 求められる効果、結果を達成するため、もっと簡単な方法はなかったのか?
- 今回のプロジェクトで、結果を得るために使ったリソース(人、物、金)は多すぎなかっただろうか?
- スピード
- 今回のプロジェクトの達成までのスピードを上げるには、どこを改善すればよいのだろうか?
- プロジェクト全体を通してのアウトプットを考えたとき、どこがボトルネックになっていただろうか?
- 人材育成
- 各人のミッションはどのようなものであったか?
- 各人のチャレンジポイントはなんだろうか?
- このプロジェクトを通して、各人が学んだものはどのようなものか?
- 達成感
- このプロジェクトについては、楽しく仕事ができていただろうか?
- 達成感をチームで共有できただろうか?
まとめ:チェックリストは“思考の資産”である
チェックリストは単なる確認作業のためのツールではありません。あなたの経験と判断を「再現可能な形」に変換し、次の行動をより速く・正確にする“思考の資産”です。
一度作っただけでは不完全でも、繰り返し使い、改善を加えることで「あなた仕様の最強テンプレ」に育っていきます。TODOリストやスケジュールと併用しながら、仕組みとしての手帳術に取り入れてみてください。
すべてを記憶に頼るのは、限界があります。チェックリストを味方につけることで、あなたの集中力はもっとクリエイティブな領域に使えるはずです。