Javaの基礎知識(実践編)

【Javaの基礎知識】Spring Bootアプリの実行環境とデプロイ手順

Spring Bootアプリを開発した後、実際に動作させるためにはデプロイと実行の手順を理解することが重要です。本記事では、Spring Bootアプリのデプロイ方法やローカル環境・クラウド環境での実行手順について詳しく解説します。

Spring Bootアプリケーションの開発では、ローカル環境での実行が基本ですが、実際にサーバーへデプロイして運用する知識も重要です。

本記事では、JARファイルの作成、ローカルおよび本番環境での実行方法、クラウド環境へのデプロイ手順などを解説します。 直接的に自分のアプリ開発環境とは関係ないと思うかもしれませんが、サーバー管理やデプロイ作業に関する知識は覚えておいて損はありません。

実際のプロジェクトでは開発者と運用担当者が連携する必要があり、アプリの動作環境を理解しておくことが、スムーズな開発・運用につながります。

この記事で学習できること

  • ローカル環境でのSpring Bootアプリの起動方法
  • JARファイルの作成と実行方法
  • 各種運用環境の違い
  • オンプレミス環境(サーバー)へのデプロイ手順
  • クラウド環境(AWS, Heroku, GCP)へのデプロイ手順
  • リバースプロキシ(Nginx, Apache)を用いた運用
  • デプロイ後の運用と管理(ログ管理・トラブルシューティング)

Spring Bootアプリのデプロイと実行とは?

Spring Bootアプリを開発した後、適切にデプロイし、実行することが重要です。本章では、デプロイと実行の基本概念について解説します。

デプロイとは?

デプロイとは、開発したアプリケーションを本番環境またはテスト環境に配置し、動作可能な状態にするプロセスを指します。Spring Bootでは、JARファイルやWARファイルを作成し、ローカル環境・クラウド環境・コンテナ環境にデプロイできます。

Spring Bootアプリの実行方法の種類

Spring Bootアプリを実行する方法はいくつかあります。主な実行方法を以下の表にまとめました。

実行方法説明
ローカル実行開発PCで直接アプリを実行する方法
JARファイル実行パッケージ化したJARファイルを実行
WARファイルデプロイTomcatなどのアプリケーションサーバー上で実行
Dockerコンテナ実行Dockerイメージを作成し、コンテナ環境で実行
クラウドデプロイAWS, GCP, Herokuなどのクラウドサービスで実行

各種運用環境の違いについて

プロジェクトによりますが、一般的なシステム開発では以下の環境が用意されます。

環境名目的
本番環境(Production)実際のユーザーがアクセスする環境。システムの最終形。
評価環境(Staging)本番環境にデプロイする前の「最終チェック」のための環境。
テスト環境(Testing)機能の動作確認やバグ修正を行うための環境。
開発環境(Development)開発者がコードを書いて実行・検証を行う環境。

プロジェクトによっては「ステージング環境」や「A面/B面環境」など、さらに細かい分類が存在します。 適切な環境の理解と管理が、安定したシステム運用につながります。

本番環境とは?

本番環境(Production Environment)は、実際のユーザーがアクセスするシステムの最終形です。一度デプロイすると簡単には修正できません。なぜなら、ひとつのバグが数万、数十万のユーザーに影響を与える可能性があるからです。

本番環境で重要なポイント

  • 安定稼働が最優先(途中でサーバーを止めることは許されない)
  • 負荷対策(アクセス集中によるダウンを防ぐ設計が必要)
  • 監視・ログ管理(障害発生時に迅速な対応が求められる)

評価環境とは?

評価環境(Staging Environment)は、本番環境にデプロイする前の「最終チェック」を行う環境です。「このプログラムを本番に入れて問題ないか?」を確認するために使います。

評価環境の特徴

  • 本番環境とほぼ同じ構成(サーバー・データベース・設定が一致)
  • 一定期間の検証が必要(一般的に1週間の運用テストを行う)
  • 本番と完全に同期されているわけではない(データや一部設定が異なる)

評価環境でのチェックポイント

  • 負荷テスト(ユーザーアクセス時の動作確認)
  • ログ監視(想定外のエラーが出ていないか)
  • セキュリティテスト(本番環境と同じ条件で脆弱性を確認)

テスト環境とは?

テスト環境(Testing Environment)は、開発したプログラムの動作確認を行う環境です。基本的に、テスト環境で問題がなければ「評価環境 → 本番環境」という流れになります。

テスト環境のポイント

  • 開発者やテスターが使う環境(バグ修正や機能検証を行う)
  • 本番とは異なるデータが使われる(テスト用のダミーデータ)
  • 自由にデータの変更・リセットが可能(壊れても修正しやすい)

テスト環境での重要なこと

  • 開発者・QA(品質管理)がバグを検出できるか?
  • API連携や外部システムとの接続が正しく動作するか?
  • 本番と異なる設定で、想定外の動作が発生しないか?

開発環境とは?

開発環境(Development Environment)は、開発者が実際にコードを書いて実行・検証する環境です。ここでは「自由にコードを修正し、デバッグを行う」ことが目的になります。

開発環境の特徴

  • ローカルPCまたはクラウド上に構築(個人ごとに異なる場合もある)
  • エラーが発生しても問題なし(開発中なので、動作が不安定でもOK)
  • 実際のデータではなく、テスト用のデータを使用

開発環境での作業内容

  • 新機能の実装(本番に影響を与えずに開発可能)
  • デバッグ・動作確認(エラー発生時に詳細なログを取得)
  • ローカルでのテスト(ネットワーク接続なしで動作確認ができる)

開発環境と本番環境には、それぞれ明確な役割があります。

  • 本番環境: 安定稼働が最優先。ユーザーに影響を与えないことが最重要。
  • 評価環境: 本番投入前の最終チェックを行うステージング環境。
  • テスト環境: 機能テストやバグ修正を行う環境。自由に検証できる。
  • 開発環境: 自由にコードを書き、試行錯誤を繰り返せる環境。

「どの環境で何をすべきか?」を理解していないと、開発・テスト・デプロイの全てが混乱します。特に、評価環境と本番環境の違いを意識していないと、致命的なミスにつながります。

ローカル環境でのSpring Bootアプリの実行

Spring Bootアプリをローカル環境で実行するには、必要なツールの準備と適切な起動方法を理解する必要があります。本章では、環境のセットアップから起動、実行確認の方法までを解説します。

実行環境の準備

Spring Bootアプリをローカルで実行するためには、以下の環境を整える必要があります。開発環境に応じて適切なツールをインストールしてください。

必要なツール説明
JDK(Java Development Kit)Javaアプリを実行するために必要
Spring BootSpring Boot CLIを利用する場合に必要
IDE(Eclipse, IntelliJ, VSCodeなど)開発・実行環境として使用
MavenまたはGradle依存関係の管理とビルドに使用

ローカル環境での起動方法を理解する必要性

開発が完了した後、プログラムは次の段階へ進み、実際のサーバー環境でデプロイされます。その際、デプロイ担当者と開発者の間で 「どのように実行されるのか」 という認識が一致していないと、トラブル発生時の対応がスムーズに行えません。

特に以下の理由から、開発者自身もサーバー上でのデプロイ方法を理解しておく必要があります。

理由具体例
デプロイ担当者との認識を一致させるためデプロイ時に問題が発生した場合、どこでエラーが起きているのかを正しく把握するには、開発者自身が実行手順を理解している必要がある。
Eclipseとは異なる環境での挙動を確認するため開発中は Eclipse 上でアプリを実行するが、本番環境では JARファイルをコマンドで実行するのが一般的。そのため、実際のデプロイ方法をローカル環境で再現し、学ぶことが重要。
環境変数や設定の影響を理解するためサーバー環境では、環境変数や設定ファイル(application.propertiesなど)を適用することで動作が変わる。ローカル環境で JAR ファイルを起動し、サーバー上での動作を事前に確認することで、予期しない問題を防ぐことができる。

この知識がないままデプロイを進めると、「ローカルでは動いていたのに、本番で動かない!」 という問題が発生し、開発者とデプロイ担当者の間で責任の所在が曖昧になってしまう可能性があります。そのため、ローカル環境での起動方法を理解し、デプロイ時のトラブルを未然に防ぐことが重要です。

適切なローカル環境での動作確認を行い、デプロイ時のトラブルを防ぎましょう。

ローカル環境での実行方法

ローカル環境でSpring Bootアプリを実行するには、Eclipseではなく JARファイルを直接起動 します。

JARファイルの作成

Eclipse上で以下のコマンドを実行し、アプリケーションのJARファイルを作成します。

mvn clean package

JARファイルの実行

作成したJARファイルをコマンドラインから実行します。

java -jar target/myapp.jar

環境変数を指定して実行

本番環境と同じ設定で実行する場合、環境変数を適用します。

SPRING_PROFILES_ACTIVE=prod java -jar target/myapp.jar

適切なローカル環境での動作確認を行い、デプロイ時のトラブルを防ぎましょう。

実行時の確認方法

アプリが正常に起動したかどうかを確認するために、以下の方法を用います。

ログの確認

アプリのログをリアルタイムで確認するには、以下のコマンドを実行します。

tail -f application.log

ブラウザでの動作チェック

Spring Bootアプリのデフォルトのポートは 8080 です。ブラウザで以下のURLにアクセスし、アプリが正常に動作しているか確認します。

http://localhost:8080

APIエンドポイントのテスト

APIが正しく動作するか確認するには、curlコマンドを使用することができます。

curl -X GET http://localhost:8080/api/test

JARファイルを使ったデプロイと実行

Spring Bootアプリは、JARファイルとしてパッケージ化し、環境に依存せず簡単にデプロイ・実行できます。本章では、JARファイルの作成方法、実行手順、トラブルシューティングについて解説します。

JARファイルの作成方法

Spring BootアプリをJARファイルとして作成するには、MavenまたはGradleを使用します。以下の手順でJARファイルを作成できます。

ビルドツールJAR作成コマンド
Maven

mvn clean package

Gradle

./gradlew build

コレまでの記事は、Maven主体で作成してきているので、ここではMavenでのJAR作成について説明していきます。

JARファイルの実行コマンドと使い分け

Spring BootのJARファイルを実行する際、用途に応じて異なるオプションを指定できます。以下の表で、主要な実行コマンドとその使い分けを整理します。

用途コマンド説明
基本的な実行方法

java -jar target/myapp.jar

JARファイルを通常起動する
開発/本番環境を切り替えたい場合

SPRING_PROFILES_ACTIVE=prod java -jar target/myapp.jar

プロファイルを指定して実行する
デフォルトの8080以外のポートで動かしたい場合

java -jar target/myapp.jar --server.port=8081

ポート番号を変更して実行
デフォルトとは別の設定ファイルを適用したい場合

java -jar myapp.jar --spring.config.location=./config/application.properties

外部の設定ファイルを読み込んで実行
JARと同じフォルダにある config/application.properties を使用する場合

java -jar myapp.jar --spring.config.location=file:./config/application.properties

外部の設定ファイルをフルパス指定で適用
プロジェクト内の特定の設定ファイルを利用したい場合

java -jar myapp.jar --spring.config.location=classpath:/custom-config.properties

クラスパス内の設定ファイルを適用

用途に応じたコマンドを選択し、適切にSpring Bootアプリケーションを起動しましょう。

Mavenを使用したJARファイルの作成例

Spring Bootアプリケーションでは、Mavenを使用してJARファイルを作成できます。JARファイルを作成することで、EclipseなどのIDEを使わずにコマンドラインからアプリを起動できるようになります。

JARファイル作成コマンド

以下のコマンドを実行すると、Mavenがプロジェクトをビルドし、JARファイルを作成します。

mvn clean package

コマンドの動作

このコマンドは、Mavenのビルドライフサイクルの一部として、以下の処理を実行します。Mavenのビルドライフサイクルには複数のフェーズがあり、順番に実行されます。以下の表で、それぞれのフェーズの役割を整理します。

フェーズ説明
clean以前のビルド成果物( target/ ディレクトリ)を削除する。
compileソースコードをコンパイルする。
testテストコードを実行する( skipTests オプションをつけない限り)。
package target/ 内に JARファイルを作成する。

JARファイルの出力先

JARファイルは、以下のディレクトリに出力されます。

target/アプリ名-バージョン.jar

例:

target/myapp-1.0.0.jar

Mavenのビルド成果物の格納場所

Mavenでは、ビルド時に 「target」ディレクトリが作成され、コンパイル済みクラスやJARファイルが格納されます。

ディレクトリ/ファイル説明
target/ビルド成果物が格納されるディレクトリ。
target/classes/コンパイル済みのクラスファイルが格納される。
target/myapp-1.0.0.jarビルドされたJARファイル(アプリ名とバージョンが付く)。
target/test-classes/テスト用のコンパイル済みクラスが格納される。

ビルドのたびに `target/` 内のファイルは更新されるため、クリーンな状態でビルドするには mvn clean を実行してください。

テストコードを実行せずにJARを作成したい場合は、以下のオプションを追加します。

mvn clean package -DskipTests

pom.xml の設定確認

JARファイルを正しく作成するためには、 pom.xml に以下の設定が必要です。

<packaging>jar</packaging>

また、Spring Bootプロジェクトでは、以下のプラグインを有効にする必要があります。

<build> <plugins> <plugin> <groupId>org.springframework.boot</groupId> <artifactId>spring-boot-maven-plugin</artifactId> </plugin> </plugins> </build>

JARファイルの実行

作成したJARファイルは、以下のコマンドで実行できます。

java -jar target/myapp-1.0.0.jar

環境変数を指定して実行

本番環境と同じ設定でJARを実行するには、環境変数を適用します。

SPRING_PROFILES_ACTIVE=prod java -jar target/myapp-1.0.0.jar

JAR作成が失敗する場合の確認ポイント

もしJARファイルが作成されない場合、以下を確認してください。

  • pom.xmlspring-boot-maven-plugin があるか?
  • エラーメッセージに test failures が出ていないか?(テストをスキップするには -DskipTests を使用)
  • Mavenの依存関係を確認する(以下のコマンドでチェック)

mvn dependency:tree

JAR実行時のトラブルシューティング

JARファイルの実行時に発生しやすい問題と対策を以下にまとめます。

エラー原因対処方法
Could not find or load main classMainクラスの指定ミス、またはJAR作成時の設定ミス
  • 以下のコマンドで手動でMainクラスを指定する

    java -cp myapp.jar com.example.MainApplication

  • META-INF/MANIFEST.MF にMain-Classが正しく設定されているか確認
Port already in useデフォルトポート(8080)が他のプロセスで使用されている
  • 使用中のプロセスを確認

    lsof -i:8080

  • プロセスを停止

    kill -9 [PID]

  • 別ポートで起動

    java -jar myapp.jar --server.port=9090

Unable to access jarfileJARファイルのパスが間違っている
  • JARファイルが正しく作成されているか確認

    ls -lh target/*.jar

    (Maven)

    ls -lh build/libs/*.jar

    (Gradle)
  • 特定のディレクトリ以下でJARファイルを探す

    find . -name "*.jar"

  • 実行パスをフルパス指定

    java -jar /home/user/myapp.jar

サーバー環境へのデプロイ(オンプレミス)

オンプレミス環境にSpring Bootアプリをデプロイする方法を解説します。オンプレミス環境では、アプリケーションサーバー(Tomcat)やWebサーバー(Nginx)と連携し、効率的な運用が求められます。

サーバー環境の種類

Spring Bootアプリをデプロイするサーバー環境には、さまざまな構成が考えられます。代表的なサーバー環境を以下の表にまとめました。

サーバー環境特徴主な用途
アプリケーションサーバー(Tomcat)WARファイルをデプロイして実行Java EEアプリの運用
Webサーバー(Nginx, Apache)リバースプロキシとして動作し、負荷分散も可能静的ファイル配信、APIリクエスト管理
独立したJAR実行Spring Bootが提供する組み込みサーバーで動作シンプルなサービスの運用

アーカイブの種類

Spring Bootアプリケーションのパッケージ形式には、主に JAR(Java Archive)WAR(Web Application Archive) の2種類があります。それぞれの用途やデプロイ方法が異なるため、違いを理解して適切な形式を選択しましょう。

項目JAR(Java Archive)WAR(Web Application Archive)
用途スタンドアロンアプリケーションの実行Webアプリケーションのデプロイ
サーバー単体で動作(組み込みTomcatやJettyを含む)Tomcat、WildFly、JBossなどのServletコンテナが必要
構成 .class ファイル、 META-INF/ などを含む WEB-INF/web.xmlclasses/ などを含む
デプロイ方法

java -jar myapp.jar

Servletコンテナの webapps/ に配置
Spring Bootの標準Spring Boot では JARが標準Spring Boot でも WARは非推奨(特殊なケース向け)

どちらを選ぶべきか?

Spring Boot では基本的に JAR を使用します。以下の基準で選択するとよいでしょう。

JARを選ぶべきケース
  • Spring Bootアプリを単体で実行したい
  • Tomcatなどの外部サーバーを使わずに動かしたい
  • 簡単にデプロイできる環境を構築したい
WARを選ぶべきケース
  • すでにTomcatなどのServletコンテナが運用されている
  • 複数のアプリを同じサーバーで管理したい
  • 従来型のJava EEアーキテクチャを採用している

特別な理由がなければ、Spring Bootでは JAR形式 を使用するのが推奨されています。

Tomcatを使用したJARデプロイ

Spring Bootアプリケーションは、JARファイルとしてTomcatにデプロイすることが可能です。Tomcatの外部プロセスとしてSpring Bootアプリを実行し、リバースプロキシを設定することで運用できます。

JARファイルの作成

以下のコマンドでJARファイルを作成します。

mvn clean package

作成されたJARファイルは、 target/ ディレクトリ内に生成されます。

Tomcatサーバーへのデプロイ

Tomcatを外部プロセスとして利用し、Spring Bootアプリをバックグラウンドで起動します。

scp target/myapp.jar user@server:/opt/myapp/
ssh user@server
nohup java -jar /opt/myapp/myapp.jar --server.port=8080 &

デプロイ確認

ブラウザで以下のURLにアクセスし、アプリが正常に起動しているか確認します。

http://localhost:8080/

Webサーバーとの連携(リバースプロキシ設定)

Spring Bootアプリケーションを公開する際、直接外部に公開せず、Webサーバー(NginxまたはApache)をリバースプロキシとして使用するのが一般的です。

リバースプロキシを使う理由

  • 外部から直接Spring Bootアプリ(8080番ポートなど)にアクセスさせない
  • 80番ポート(HTTP)や443番ポート(HTTPS)でのリクエストを処理できる
  • ロードバランシングやSSL終端をWebサーバー側で設定できる
  • 静的ファイルの配信を最適化し、パフォーマンスを向上させる

Nginxを使用する場合

Nginxをリバースプロキシとして設定するには、以下の設定を追加します。

server {
  listen 80;
  server_name myapp.example.com;
  location / {
    proxy_pass http://localhost:8080;
    proxy_set_header Host $host;
    proxy_set_header X-Real-IP $remote_addr;
    proxy_set_header X-Forwarded-For $proxy_add_x_forwarded_for;
  }
}

この設定により、 http://myapp.example.com へのリクエストは内部で8080番ポートのSpring Bootアプリに転送されます。

Apache(httpd)を使用する場合

Apacheをリバースプロキシとして利用する場合、以下の設定を追加します。

この設定により、Nginxと同様に80番ポートのリクエストを8080番ポートのSpring Bootアプリに転送します。

リバースプロキシ設定の確認

  • Spring Bootアプリが 8080 番ポートで正常に起動しているか確認
  • NginxまたはApacheの設定を適用し、再起動( systemctl restart nginx または systemctl restart httpd
  • ブラウザで http://myapp.example.com にアクセスし、動作を確認

クラウド環境へのデプロイ

Spring Bootアプリをクラウド環境にデプロイすることで、スケーラビリティや可用性を向上させることができます。本章では、代表的なクラウドプラットフォームであるAWS EC2、Heroku、Google Cloud Runを使用したデプロイ方法について解説します。

主要なクラウド環境の比較

Spring Bootアプリケーションをクラウドにデプロイする場合、AWS、Heroku、GCP(Google Cloud Platform)などの選択肢があります。それぞれの特徴を簡単に比較します。

クラウド特徴デプロイ方法用途
AWS(EC2, ECS, Lambda)最も普及しているクラウドサービス。柔軟な構成が可能。EC2なら手動設定、ECSならDocker、Lambdaならサーバーレス。**本番環境向け**(高可用性・スケーラビリティが必要な場合)
Heroku簡単なデプロイが可能なPaaS。Gitプッシュでデプロイできる。

git push heroku main

**開発・テスト環境向け**(サーバーレス的に手軽に運用)
GCP(Cloud Run, App Engine)Googleのクラウド。コンテナデプロイに最適。Cloud RunはDocker、App Engineはアプリを直接デプロイ。**マイクロサービス向け**(自動スケールが必要な場合)

クラウド環境を選ぶ際は、アプリの規模や運用コストを考慮することが重要です。

AWS EC2へのデプロイ方法

AWS EC2(Elastic Compute Cloud)は、仮想マシン環境を提供し、Spring Bootアプリを独立したサーバー上で実行できます。

EC2インスタンスの作成

AWSマネジメントコンソールにアクセスし、新しいEC2インスタンスを作成します。推奨設定は以下の通りです。

設定項目推奨値
AMIAmazon Linux 2 または Ubuntu 20.04
インスタンスタイプt2.micro(無料枠)または t3.small 以上
ストレージ最低 8GB
セキュリティグループSSH (22), HTTP (80), HTTPS (443), カスタムポート (8080)

JavaとSpring Bootアプリのセットアップ

インスタンス作成後、SSHで接続し、Javaをインストールします。

sudo yum install java-17-openjdk

次に、Spring BootアプリのJARファイルをEC2に転送し、実行します。

scp myapp.jar ec2-user@your-ec2-ip:/home/ec2-user/
nohup java -jar myapp.jar --server.port=8080 &

デプロイの確認

ブラウザで以下のURLにアクセスし、アプリが正常に動作するか確認します。

http://your-ec2-ip:8080

Herokuを利用したデプロイ方法

Herokuは、PaaS(Platform as a Service)環境で、Spring Bootアプリのデプロイが簡単にできます。

Heroku CLIのインストールとログイン

Heroku CLIをインストールし、ログインします。

heroku login

Herokuアプリの作成とデプロイ

Herokuアプリを作成し、GitリポジトリをHerokuにプッシュします。

heroku create my-spring-app
git push heroku main

環境変数の設定

Herokuのデフォルトポートは5000のため、環境変数を設定します。

heroku config:set SERVER_PORT=5000

デプロイの確認

HerokuのURLにアクセスし、アプリが正常に動作するか確認してください。

https://my-spring-app.herokuapp.com

GCP Cloud Runでのデプロイ手順

Google Cloud Runは、コンテナベースのデプロイをサーバーレスで提供するサービスです。

Google Cloud SDKのセットアップ

Google Cloud SDKをインストールし、認証を行います。

gcloud auth login

Dockerコンテナの作成

Spring BootアプリをDockerイメージ化し、Google Container Registryにプッシュします。

docker build -t gcr.io/my-project/myapp .
gcloud auth configure-docker
docker push gcr.io/my-project/myapp

Cloud Runへのデプロイ

Cloud Runにアプリをデプロイし、公開URLを取得します。

gcloud run deploy myapp --image gcr.io/my-project/myapp --platform managed --region us-central1 --allow-unauthenticated

デプロイの確認

ブラウザで以下のURLにアクセスし、アプリが正常に動作するか確認してください。

https://myapp-xxxxx.a.run.app

デプロイ後の運用と管理

Spring Bootアプリをデプロイした後は、適切な運用と管理が重要になります。本番環境で安定して稼働させるためには、ログの管理やシステムの監視、定期的なアップデート、障害発生時のトラブルシューティングが欠かせません。本記事では、デプロイ後に必要な管理方法について解説します。

ログ管理とモニタリング

アプリケーションのログ管理とモニタリングは、運用の安定性を確保するために不可欠です。適切なログ管理を行うことで、障害発生時の迅速な原因特定が可能になります。

ログの種類とその役割

ログにはいくつかの種類があり、それぞれ異なる目的で使用されます。

ログの種類目的主な記録内容
アプリケーションログアプリの動作記録ユーザーのリクエスト、レスポンス、エラーメッセージ
システムログOSやプロセスの状態CPU使用率、メモリ消費、ネットワーク接続状況
セキュリティログ不正アクセスの検出ログイン履歴、アクセス制御、権限変更

ログ管理ツールの活用

適切なツールを利用することで、ログの収集・分析・通知を効率的に行うことができます。

  • ELK Stack(Elasticsearch, Logstash, Kibana) - ログの収集・検索・可視化が可能
  • Fluentd - 軽量で拡張性の高いログ収集ツール
  • CloudWatch(AWS) - クラウド環境のログ管理

リアルタイムモニタリングの重要性

ログの収集だけでなく、リアルタイムで監視し異常を検知することが重要です。主なモニタリングツールには以下のようなものがあります。

  • Prometheus - オープンソースの監視ツール、時系列データの収集・可視化が可能
  • Grafana - メトリクスデータを視覚化するダッシュボードツール
  • Zabbix - エンタープライズ向け監視システム

アプリケーションの更新方法

本番環境でのアプリケーションの更新は、安定した運用を維持しながら実施する必要があります。更新方法を適切に選択することで、ダウンタイムを最小限に抑えることが可能です。

ローリングアップデート

ローリングアップデートは、複数のインスタンスを順番に更新しながらシステムを稼働させ続ける方法です。クラウド環境では一般的なアプローチです。

  • 一部のインスタンスを停止 → 新バージョンに更新 → 再起動
  • ユーザーへの影響を最小限に抑えつつ、シームレスに移行可能
  • DockerやKubernetesを使用すると、簡単にローリングアップデートを実施できる

ブルーグリーンデプロイメント

ブルーグリーンデプロイメントは、本番環境を「ブルー(旧バージョン)」と「グリーン(新バージョン)」の2つに分けて、スイッチする方法です。

  • 新バージョンを「グリーン環境」にデプロイし、テスト

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