
Javaのプログラムでは、エラーが発生すると処理が停止してしまうことがあります。しかし、例外処理を適切に実装すれば、エラーを制御し、安定したプログラムを作成できます。本記事では、Javaの例外処理の基本から実践的なエラー対策までを解説します。
例外処理とは? 基本概念を理解しよう
Javaの例外処理は、プログラムが異常な状態になった際に、適切にエラーハンドリングを行うための仕組みです。 例外を正しく処理しないと、プログラムが異常終了する原因となります。 ここでは、例外の基本概念を理解し、適切なエラーハンドリングの方法を学びましょう。
例外(Exception)とは?
Javaにおける「例外(Exception)」とは、プログラムの実行中に発生する予期しない問題のことを指します。 たとえば、以下のような状況で例外が発生します。
- 0で割り算しようとした場合( ArithmeticException)
- nullのオブジェクトを参照しようとした場合( NullPointerException)
- ファイルが見つからない場合( FileNotFoundException)
例外が発生すると、通常の処理の流れが中断されます。そのため、適切な例外処理を行うことが重要です。
エラー(Error)との違い
Javaには「例外(Exception)」と「エラー(Error)」の2種類の異常があります。 両者は混同されがちですが、以下の表のように性質が異なります。
種類 | 特徴 | 対処方法 |
---|---|---|
Exception(例外) | プログラム実行時に発生する異常で、適切に処理すれば回復可能 | try-catch で処理し、適切なエラーハンドリングを行う |
Error(エラー) | JVMの動作に関わる重大な異常で、通常は回復不可能 | 基本的に対処不可。発生した場合はプログラムを終了する |
例えば、メモリ不足による OutOfMemoryError や、スタックオーバーフローによる StackOverflowError などは、通常のプログラムでは処理できません。
チェック例外と非チェック例外の違い
Javaの例外は、大きく分けて以下の2種類に分類されます。
- チェック例外(Checked Exception)
- 非チェック例外(Unchecked Exception)
それぞれの違いを以下の表で確認しましょう。
種類 | 特徴 | 代表的な例外 |
---|---|---|
チェック例外 | コンパイル時に処理が強制される例外 |
|
非チェック例外 | プログラム実行時に発生する例外で、処理は任意 |
|
チェック例外は、コンパイル時に処理が強制されるため、事前にエラーハンドリングを行う必要があります。一方、非チェック例外は開発者の判断で適宜処理を行うことが可能です。
Javaの例外処理の基本構文
例外処理を実装するための基本構文を確認しましょう。Javaでは、try-catch文を用いて例外を処理し、必要に応じてfinallyブロックを活用することで、プログラムの安定性を向上させることができます。また、throwsとthrowの使い分けについても理解しておきましょう。
try-catch文の使い方
例外が発生する可能性がある処理を実行する場合、try-catch文を使用して適切にエラーハンドリングを行います。
try {
// 例外が発生する可能性のある処理
} catch (例外クラス e) {
// 例外が発生した際の処理
}
上記の構文では、tryブロック内で例外が発生すると、対応するcatchブロックでその例外を処理します。発生した例外に応じて、適切なエラーハンドリングを実装しましょう。
finallyブロックの役割
finallyブロックは、例外の有無に関わらず、必ず実行されるコードを記述するために使用します。主に、リソースの解放や後処理を行う際に活用されます。
try {
// 例外が発生する可能性のある処理
} catch (Exception e) {
// 例外発生時の処理
} finally {
// 例外の有無にかかわらず実行される処理
}
例えば、データベース接続やファイル処理を行う際、finallyブロック内でリソースを確実に解放することで、メモリリークなどの問題を防ぐことができます。
throwsとthrowの違い
Javaでは、例外を処理する際に「throws」と「throw」という2つのキーワードが使われますが、それぞれの役割は異なります。
キーワード | 用途 | 使用例 |
---|---|---|
throws | メソッドが例外をスローする可能性があることを宣言 | public void testMethod() throws IOException { |
throw | 特定の例外をスローする | throw new IllegalArgumentException("不正な引数です"); |
「throws」はメソッドのシグネチャで使用し、呼び出し側に例外処理を委ねるのに対し、「throw」は実際に例外をスローする際に使用されます。適切に使い分けることで、エラーハンドリングを明確にすることができます。
例外処理をするべきケース
try-catchの中に入れるべきコードは、「例外が発生する可能性があり、適切に処理しないとプログラムの動作に影響を与えるもの」です。以下のようなケースでは、try-catchを使用して例外をキャッチし、適切なエラーハンドリングを行うべきです。
① 外部リソースにアクセスする処理
外部リソース(ファイル、データベース、ネットワークなど)にアクセスする処理では、想定外のエラーが発生する可能性があるため、try-catchで例外をキャッチし、適切なエラーハンドリングを行うべきです。
DBアクセス
try {
Connection conn = DriverManager.getConnection("jdbc:mysql://localhost:3306/testdb", "user", "password");
Statement stmt = conn.createStatement();
ResultSet rs = stmt.executeQuery("SELECT * FROM users");
} catch (SQLException e) {
System.err.println("データベースエラー:" + e.getMessage());
}
DriverManager.getConnection(…) を使用して データベース接続を確立する処理 を行っています。ここで SQLException が発生する可能性があるため、try-catch で例外を処理しています。
データベースアクセスやファイル操作では、例外が発生する可能性が高いため、適切なエラーハンドリングを行うことが重要です。以下の表では、それぞれの処理における代表的な例外と対処方法をまとめています。
処理対象 | 例外クラス | 発生原因 | 例外処理のポイント |
---|---|---|---|
データベースアクセス | SQLException | 接続失敗、SQLエラー、認証エラー | try-catch で適切に処理し、ログを記録する |
データベースアクセス | SQLTimeoutException | クエリの実行時間が長すぎる | タイムアウトを設定し、再試行する仕組みを作る |
データベースアクセス | DataAccessException | Spring JDBC などでのデータアクセスエラー | 一般的なデータベースエラーを包括的に処理する |
この表をもとに、それぞれの処理で適切な例外処理を実装することで、システムの安定性を向上させることができます。
ファイル操作
try {
FileReader file = new FileReader("data.txt");
BufferedReader reader = new BufferedReader(file);
String line = reader.readLine();
} catch (IOException e) {
System.err.println("ファイル読み込みエラー:" + e.getMessage());
}
ァイル操作は、外部リソースへのアクセスを伴うため、予期しないエラーが発生しやすい処理の一つです。
Javaでは、ファイルの読み書き時に IOException などの例外が発生する可能性があるため、try-catch を使って適切にエラーハンドリングを行う必要があります。
処理対象 | 例外クラス | 発生原因 | 例外処理のポイント |
---|---|---|---|
ファイルを開く | FileNotFoundException | 指定したファイルが存在しない | 事前にファイルの存在を確認し、適切なメッセージを表示する |
ファイルの読み書き | IOException | 入出力エラーが発生 | エラーログを出力し、処理を中断しないようにする |
ファイルのアクセス権限 | SecurityException | アクセス権限が不足している | 権限設定を見直し、適切なエラーメッセージを表示する |
ファイルのエンコーディング | UnsupportedEncodingException | 指定した文字エンコーディングがサポートされていない | UTF-8 などの標準的なエンコーディングを使用する |
ファイル操作の際は、これらの例外が発生する可能性を考慮し、try-catch を適切に活用しましょう。また、Java 7 以降では try-with-resources を使うことで、リソースの適切な解放を自動化できます。
② ユーザー入力を処理する処理
数値変換
try {
int number = Integer.parseInt("abc");
} catch (NumberFormatException e) {
System.err.println("無効な数値入力:" + e.getMessage());
}
ユーザー入力やファイル・データベースから取得した値を数値に変換する際、想定外のデータが入力されると例外が発生します。これを適切に処理しないと、プログラムがクラッシュする原因になります。
処理対象 | 例外クラス | 発生原因 | 例外処理のポイント |
---|---|---|---|
文字列を整数に変換 | NumberFormatException | 非数値の文字列を Integer.parseInt() や Double.parseDouble() で変換 | try-catch で処理し、エラー時はデフォルト値を返す |
ゼロ除算 | ArithmeticException | ゼロで除算を行おうとした | 事前にゼロチェックを行い、エラーを防ぐ |
大きすぎる数値の変換 | NumberFormatException | 許容範囲を超えた値(例:longに収まらない整数) | try-catch で処理し、範囲を制限する |
数値変換の際は、ユーザーが予期しないデータを入力する可能性があるため、例外処理を適切に行い、プログラムが安全に動作するようにしましょう。
③ ネットワーク通信
try {
URL url = new URL("http://example.com");
HttpURLConnection conn = (HttpURLConnection) url.openConnection();
conn.setRequestMethod("GET");
int responseCode = conn.getResponseCode();
} catch (IOException e) {
System.err.println("ネットワークエラー:" + e.getMessage());
}
ネットワーク通信を行う際、サーバーの応答がない、接続が切れる、タイムアウトが発生するなどの問題が発生する可能性があります。これらの例外を適切に処理しないと、アプリケーションがクラッシュする原因になります。
処理対象 | 例外クラス | 発生原因 | 例外処理のポイント |
---|---|---|---|
ネットワーク接続 | UnknownHostException | 指定したホスト名が解決できない | DNS設定を確認し、正しいURLか検証する |
HTTPリクエスト | MalformedURLException | 不正なURLフォーマット | URLの形式を事前にチェックし、適切な値を設定する |
サーバー接続 | SocketTimeoutException | サーバーからの応答が一定時間ない | タイムアウト値を適切に設定し、再試行処理を実装する |
データ送受信 | IOException | ネットワーク接続中にエラーが発生 | エラーハンドリングを行い、通信の再試行を考慮する |
ネットワーク通信では、さまざまなエラーが発生する可能性があるため、try-catch を適切に活用し、エラー時の処理を考慮して実装することが重要です。
④ スレッド処理
try {
Thread.sleep(1000);
} catch (InterruptedException e) {
System.err.println("スレッドが中断されました:" + e.getMessage());
}
Javaのマルチスレッド処理では、スレッドの中断、同期処理の問題、予期しないエラーなどが発生する可能性があります。これらの例外を適切に処理しないと、プログラムの動作が不安定になることがあります。
処理対象 | 例外クラス | 発生原因 | 例外処理のポイント |
---|---|---|---|
スレッドのスリープ | InterruptedException | スレッドが sleep() 中に割り込まれた | catch ブロックで適切に中断フラグを設定する |
スレッドの同期 | IllegalMonitorStateException | ロックを持たないスレッドが wait() や notify() を呼び出した | スレッドのロック状態を事前に確認し、適切な同期処理を行う |
スレッドの処理 | ExecutionException | Callable で例外が発生 | try-catch でエラーメッセージをログに出力する |
スレッドプール | RejectedExecutionException | スレッドプールのタスクキューがいっぱい | スレッドプールのサイズを適切に調整する |
スレッド処理では、適切な例外処理を行うことで、プログラムの安定性を高めることができます。特に、 InterruptedException などのスレッドの割り込みを適切に処理することが重要です。
try-catch を使うべきでないケース
例外処理はプログラムの安定性を向上させますが、すべてのコードに適用すればよいわけではありません。不要なtry-catchを多用すると、コードの可読性が低下し、パフォーマンスにも悪影響を及ぼす可能性があります。
① 例外が発生しない可能性が高いコード
通常、try-catch で囲むべきでない処理として、算術演算や単純な変数代入などがあります。
✖ 不必要な例
try {
int a = 10;
int b = 20;
int c = a + b;
} catch (Exception e) {
System.err.println("これは不要な例外処理");
}
② 無意味に例外をcatchして、何もしない
✖ 悪い例
try {
int result = 10 / 0;
} catch (ArithmeticException e) {
// 何もしない(NG)
}
✔ 適切な処理
try {
int result = 10 / 0;
} catch (ArithmeticException e) {
System.err.println("ゼロで除算しようとしました: " + e.getMessage());
}
例外処理は、適切な場面で適切に使うことで、プログラムの安定性と可読性を向上させます。
try-catch を適切に使いこなすためのポイント
try-catch を適切に使うためには、どのような例外(Exception)が発生するのかを理解し、それに応じた適切なエラーハンドリングを実装する必要があります。無駄な try-catch の使用を避け、適切な範囲で例外を処理することが重要です。
どの処理でどの例外が発生する可能性があるのかを理解する
まず、実装する処理ごとに発生し得る例外を理解することが重要です。以下の表は、代表的な処理と発生しやすい例外の対応を示しています。
処理対象 | 代表的な例外クラス | 発生原因 |
---|---|---|
データベースアクセス | SQLException | SQLの構文エラー、接続エラー |
ファイル操作 | IOException | ファイルの読み書きエラー、アクセス権限なし |
数値変換 | NumberFormatException | 文字列を数値に変換できない |
ネットワーク通信 | SocketTimeoutException | サーバーからの応答が遅延または途絶 |
スレッド処理 | InterruptedException | スレッドのスリープが中断される |
チェック例外と非チェック例外の違いを理解する
Javaの例外には、チェック例外(Checked Exception)と非チェック例外(Unchecked Exception)の2種類があります。それぞれの違いを理解し、適切に処理しましょう。
種類 | 特徴 | 代表的な例外 |
---|---|---|
チェック例外 | コンパイル時に処理が強制される | IOException, SQLException |
非チェック例外 | 実行時に発生し、try-catch は必須ではない | NullPointerException, ArithmeticException |
無駄な try-catch を使わない
try-catch を適切に使うには、不必要な例外キャッチを避けることが重要です。
✖ 悪い例(無駄な try-catch)
try {
int result = 10 + 5;
} catch (Exception e) {
System.err.println("不要な例外処理");
}
→ 数値計算に try-catch を使うのは無意味。
✔ 良い例(必要な try-catch)
try {
int number = Integer.parseInt("abc");
} catch (NumberFormatException e) {
System.err.println("数値変換エラー:" + e.getMessage());
}
→ 実際に例外が発生する可能性がある処理のみを try-catch で囲む。
例外発生時の対応策を決める
例外が発生した際の適切な対応策を考えて実装することが重要です。
エラーの種類 | 対応策 |
---|---|
リカバリ可能なエラー(ネットワーク遅延) | 再試行処理を実装し、ユーザーに通知する |
リカバリ不可能なエラー(メモリ不足) | 無理に処理を継続せず、適切にプログラムを終了する |
適切なエラーハンドリングを行うことで、システムの安定性を高めることができます。
スロー(throw)とは?
一言で言うと、「スロー(throw)」は例外を発生させ、上位の処理に通知するための仕組み です。 つまり、例外を「発生元」から「上位の処理」に伝える手段 ということになります。
スロー(throw)とスロー宣言(throws)の違い
キーワード | 役割 |
---|---|
throw | 例外を実際にスロー(発生)させる |
throws | メソッドが例外をスローする可能性があることを宣言する |
例:throw の使用(例外をスローする)
void someMethod() {
throw new IllegalArgumentException("無効な引数です");
}
このメソッドを実行すると、 IllegalArgumentException がスローされ、処理が異常終了します。
例:throws の使用(例外を上位に通知する)
void someMethod() throws IOException {
FileReader file = new FileReader("data.txt"); // ファイルがないと例外発生
}
IOException が発生する可能性を宣言し、呼び出し元に処理を委ねます。
スロー(throw)は「上のクラス」へ投げるものなのか?
厳密には、「呼び出し元(上位のメソッド)」に例外を伝える動作 になります。
例:メソッドチェーンでの例外の伝達
void methodA() throws Exception {
methodB(); // methodB の例外をそのまま上に投げる
}
void methodB() throws Exception {
methodC(); // methodC の例外をそのまま上に投げる
}
void methodC() throws Exception {
throw new Exception("例外発生"); // 最初の例外発生地点
}
この場合、 methodC() で発生した例外は methodB() を通り、 methodA() に伝わります。 つまり、throw された例外は、catch されるまで上位のメソッドに伝播していく という仕組みです。
例外をどこでキャッチするべきか?
例外を throw しても、どこかで catch しないと、最終的にプログラムが異常終了します。 一般的に、以下のような方針で例外をキャッチします。
キャッチの場所 | 目的 |
---|---|
メソッド内でキャッチ | その場でエラー処理(軽微な問題の場合) |
呼び出し元でキャッチ | メソッド単体では解決できない問題(リトライ処理など) |
最上位の処理でキャッチ | 画面表示やログ出力など、システム全体のエラーハンドリング |
ややこしくなるので初心者のうちは「スローは上のクラスに投げる」というより、「上のメソッドに通知する」もの と考えたほうが正しいです!
代表的な例外の種類と対策
Javaでは、さまざまな種類の例外が発生します。プログラムの安定性を保つためには、代表的な例外の発生原因と適切な対策を理解することが重要です。以下に、よく発生する例外の概要と対策を紹介します。
NullPointerException(ヌルポ)
NullPointerException は、オブジェクトが null の状態でメソッドを呼び出したり、プロパティへアクセスしようとした際に発生する例外です。
発生原因
- 未初期化のオブジェクトに対してメソッドを呼び出した場合
- 配列やリストの要素が null であるにも関わらず、メソッドを実行しようとした場合
対策
- 変数が null でないことを事前にチェックする
- Optional を利用し、null安全なコードを記述する
例外処理のコード
try {
String text = null;
System.out.println(text.length()); // ここでNullPointerException発生
} catch (NullPointerException e) {
System.err.println("Nullオブジェクトにアクセスしようとしました: " + e.getMessage());
}
ArrayIndexOutOfBoundsException(配列範囲外)
ArrayIndexOutOfBoundsException は、配列の範囲外にアクセスしようとした場合に発生する例外です。
発生原因
- 配列のインデックスが範囲外(負の値またはサイズ以上)
- ループ処理で誤った範囲指定をしている
対策
- 配列の長さを事前にチェックする
- ループの範囲を適切に設定する
例外処理のコード
try {
int[] numbers = {1, 2, 3};
System.out.println(numbers[5]); // 範囲外アクセス
} catch (ArrayIndexOutOfBoundsException e) {
System.err.println("配列の範囲外アクセス: " + e.getMessage());
}
IOException(入出力エラー)
IOException は、ファイルの読み書き中にエラーが発生した場合にスローされる例外です。
発生原因
- 指定したファイルが存在しない
- ファイルのアクセス権限が不足している
- ネットワーク接続中に問題が発生
対策
- ファイルが存在するか事前に確認する
- try-with-resources を活用し、適切にリソースを管理する
例外処理のコード
try {
FileReader file = new FileReader("nonexistent.txt");
BufferedReader reader = new BufferedReader(file);
String line = reader.readLine();
} catch (IOException e) {
System.err.println("ファイル入出力エラー: " + e.getMessage());
}
以上のように、代表的な例外の発生原因と対策を理解し、適切な例外処理を実装することで、Javaプログラムの安定性を向上させることができます。
実践! 例外処理のベストプラクティス
実際の開発では、単に例外をキャッチするだけではなく、適切なエラーハンドリングを行うことが重要です。ここでは、例外処理のベストプラクティスを紹介します。
例外メッセージを適切にログに出力
例外発生時に適切なメッセージをログに記録することで、問題の特定やデバッグが容易になります。特に、開発環境では詳細なエラーメッセージを出力し、本番環境では最小限の情報に抑えるのが一般的です。
✔ 適切なログ出力の例
try {
// 処理
} catch (Exception e) {
System.err.println("エラー発生:" + e.getMessage());
}
✔ ログファイルに記録する方法
import java.util.logging.Logger;
public class Sample {
private static final Logger logger = Logger.getLogger(Sample.class.getName());
public static void main(String[] args) {
try {
int result = 10 / 0; // 例外発生
} catch (Exception e) {
logger.severe("エラー発生:" + e.getMessage());
}
}
}
ユーザー向けのエラーハンドリング
エラーが発生した際に、ユーザーに対して適切なメッセージを表示することで、UX(ユーザーエクスペリエンス)を向上させることができます。
✔ 良い例(ユーザーにわかりやすく伝える)
try {
FileReader file = new FileReader("data.txt");
} catch (FileNotFoundException e) {
System.out.println("ファイルが見つかりませんでした。管理者にお問い合わせください。");
}
✖ 悪い例(技術的な情報をそのまま表示)
try {
FileReader file = new FileReader("data.txt");
} catch (FileNotFoundException e) {
System.out.println(e.getMessage()); // 技術的なエラー情報がそのまま表示される
}
一般のユーザーに対しては「エラーの内容」ではなく、「どのように対応すればよいか」を明示したメッセージを表示するのがベストです。
例外の再スローとカスタム例外の活用
独自の例外クラスを作成することで、より明確なエラーハンドリングが可能になります。また、例外をキャッチした後に別の例外をスローする「再スロー」も効果的です。
✔ 例外の再スロー
try {
someMethod();
} catch (IOException e) {
throw new RuntimeException("処理に失敗しました", e);
}
再スローを行うことで、上位の処理にエラーの発生を伝えつつ、より適切な例外に置き換えることができます。
✔ カスタム例外の作成
class CustomException extends Exception {
public CustomException(String message) {
super(message);
}
}
try {
throw new CustomException("カスタム例外が発生しました");
} catch (CustomException e) {
System.out.println(e.getMessage());
}
カスタム例外を使うことで、システム内のエラーハンドリングをより整理し、分かりやすくすることができます。
例外処理のベストプラクティスを活用し、安定したシステムを構築しましょう。
Javaの例外クラスの調べ方
Javaの例外クラスを調べるには、公式の JavaDoc を活用するのが最も確実です。 以下の方法で、例外クラスの一覧や詳細なドキュメントを確認できます。
公式 JavaDoc で調べる
Javaの例外クラスは java.lang.Throwable のサブクラスなので、まず JavaDoc の Throwable のページを確認します。
🔗 JavaDoc - Throwable クラス(最新バージョン)
https://docs.oracle.com/en/java/javase/17/docs/api/java.base/java/lang/Throwable.html
このページの「Direct Known Subclasses」をチェックすると、主な例外クラスの一覧が表示されます。
Javaの例外クラス一覧を確認する
Javaの例外は、大きく チェック例外(Checked Exception) と 非チェック例外(Unchecked Exception) に分類されます。
🔗 Exception クラス一覧(JavaDoc)
https://docs.oracle.com/en/java/javase/17/docs/api/java.base/java/lang/Exception.html
🔗 RuntimeException クラス一覧(JavaDoc)
https://docs.oracle.com/en/java/javase/17/docs/api/java.base/java/lang/RuntimeException.html
例外クラスの詳細を調べる
特定の例外について詳しく調べたい場合は、公式 JavaDoc の検索機能を使います。
🔎 Java SE の JavaDoc 検索ページ
https://docs.oracle.com/en/java/javase/17/docs/api/index.html
ここで IOException や NullPointerException などの例外クラスを検索すると、各例外の説明やメソッドが確認できます。
よく使う例外の JavaDoc 直リンク
例外クラス | JavaDoc |
---|---|
NullPointerException | リンク |
IOException | リンク |
SQLException | リンク |
ArrayIndexOutOfBoundsException | リンク |
IllegalArgumentException | リンク |
ArithmeticException | リンク |
コード上で例外クラスを探す
IDE(Eclipse, IntelliJ IDEA)を使っている場合、コード上で例外クラスを調べる方法もあります。
✔ IDEでの方法
- マウスオーバー
- 例外クラスにカーソルを合わせると、簡単な説明が表示される - Ctrl + クリック(Windows) / Command + クリック(Mac)
- 例外クラスの定義にジャンプできる - ショートカットキー(Eclipseの場合)
- F3 キーを押すと、クラス定義に移動できる - JavaDoc 参照機能
- IDE の「クイックドキュメント(Ctrl + Q / F1)」で JavaDoc を表示
まとめ
初心者のうちにプログラミングを学ぶときに思い描くのは、「アプリを作る」「ゲームを動かす」といった楽しい部分でしょう。 私自身もそうでした(もうかれこれ20年前の話ですが…)。
しかし、例外処理は「エラーを防ぐための守りの技術」であり、華やかさとは無縁に見えます。 実際、「エラーなんて出さなきゃいいじゃん?」 と思う初心者も少なくありません。 私も同じ考えでした。…プロジェクトを炎上させ、障害対応に追われるまでは。
昔なら「初心者(20代)だから」と多少のミスは許容されることもありました。 しかし、昨今ではそんな甘えは通じません。若かろうが、女性だろうが、 「ダメなものは排除する」という厳しい現実が待っています。 技術を習得するための猶予がないまま、結果だけを求められる時代になりつつあるのも事実です。
とはいえ、Javaを学ぶなら「例外処理」は避けて通れません。 つまらないと感じるかもしれませんが、例外処理は「自分の信用」に直結します。 Javaプログラマーを目指すなら、ぜひともこの概念をしっかり理解しておいてください。
例外処理こそが「Javaらしさ」
Java は「堅牢で安全なプログラムを作ること」を前提に設計された言語です。 そのため、「エラー処理がしっかりしている」=「Javaらしさ」 とも言えます。
例えば、Python や JavaScript では例外処理をしなくてもコードが動きますが、Java では例外処理を 「強制」*されます。 `throws` を書かないとコンパイルエラーになるのは、「適当なコードを書かせない」 という Java の思想そのものです。
初心者にとって例外処理はつまらない?
正直なところ、最初は「面倒くさい」としか思えないかもしれません。 「エラー処理なんて後回しでいいから、とにかく動くコードを書きたい!」 と思うのが普通です。
しかし、実務では 「エラーが起きても落ちないコード」こそが価値のあるコード です。 「例外処理のしっかりしたコード=信頼性の高いプログラム」 という考え方は、Java の基本思想と直結しています。
だからこそ、「例外処理は Java の花形じゃない。でも、例外処理こそが Java そのもの」 なのです。
本記事では、Javaの例外処理の基本から実践的なエラー対策までを解説しました。適切な例外処理を実装することで、エラーの影響を最小限に抑え、安定したプログラムを作成できます。
例外処理のポイント
例外処理を適切に行うための重要なポイントを以下にまとめます。
項目 | ポイント |
---|---|
try-catch の活用 | エラーが発生する可能性のあるコードを適切に囲み、処理を継続できるようにする |
適切なログ出力 | エラー発生時の状況を記録し、デバッグや運用時に役立てる |
例外の種類を理解 | チェック例外・非チェック例外を把握し、適切なエラーハンドリングを行う |
カスタム例外の活用 | 独自の例外クラスを作成し、エラーの種類を明確にする |
例外のスロー(throw) | 上位のメソッドにエラーを通知し、適切な場所で処理を行う |
例外処理の適用例
実際のプログラムでは、以下のような場面で例外処理を活用することが重要です。
- ファイルの読み書き( IOException)
- データベースアクセス( SQLException)
- ユーザー入力のバリデーション( NumberFormatException)
- ネットワーク通信( SocketTimeoutException)
- スレッド処理( InterruptedException)