年の瀬が近づくにつれ、来たる新年に向けて新たな一歩を踏み出す準備を進めようとする方も多いのではないでしょうか。リモートワークが当たり前となり、コンピュータのハードウェア性能は驚異的なスピードで進化し、ChatGPTをはじめとした高度なAIツールが利用可能になった今、私たちを取り巻く技術環境はかつてないほどの変化を遂げています。
「最も強い者ではなく、変化できる者が生き残る」というダーウィンの言葉が、これほど身にしみる時代はないかもしれません。これから始まる新しい年を前に、単なる知識の蓄積ではなく、変化に対応し成長し続けるための選択肢を広げ、新たな技術との対話を始めていくことが、私たちに求められているのではないでしょうか。
つい最近の出来事ですが、昨今の若手エンジニアの8割近くがUS配列のキーボードを使用しているのには驚きました!
職場に外国人の方がいるのが当たり前となった昨今、至極当たり前のことなのかもしれませんが、筆者が若手の頃はJIS配列を当然のように使用していました。それとなく理由を尋ねてみたところゲームの普及でJIS配列のキーボードでは勝者になれない・・つまり勝ち残れないのだとか・・
何を言っているのかよくわかりません。w
当然、知識を伝えようとしてもUS配列が扱えない筆者は相手のPCを使って技術を伝えることができません。
「君のPC、コロンが打てないんだけど・・どこ押すの?」・・・
気づかないうちにIT業界のみならず、あらゆる物の全てが変化しているのだと痛感しました。
今回の記事では、そんな「変化への備え」として、AIをはじめとするさまざまな新技術に柔軟に対応するための取り組みを考えていきたいと思います。
今後淘汰されていく職種
淘汰されるのがわかっている職業のスキルを磨いても数年先には需要がなければ意味がありません。まずは、「今後淘汰される職業」とは何かを考えてみたところ、下記の職種が該当するようです。
今後淘汰される可能性がある職種
- 定型的な事務・オペレーション業務担当者
リモートワークやクラウド化により、定型的な事務処理はRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAIチャットボット、Webフォーム自動化などで容易に代替できる。
- な分析を必要としないコンテンツ制作・翻訳者
ChatGPTなどの生成AIは自然言語処理能力が急速に向上し、記事の下書きや資料要約、簡易な翻訳が瞬時に行えるようになっている。
- 決まりきった処理フローに従う中間業者や仲介業者
たとえば在庫管理、基本的な保険手続き、証券取引など、人手が「仲介」していただけのプロセスは、スマートコントラクトや自動化システムによって淘汰されやすい。
今後淘汰が進む可能性が高いのは、定型的・反復的なタスクに従事する職種や、情報の単純な仲介・整理に終始する職種です。
具体的には、どんな職種か下記に列挙します。
- データ入力スタッフ:単純な入力作業はRPAやOCRで自動化可能。
- コールセンターの一次対応担当:よくある問い合わせはチャットボットや音声AIに置き換え。
- 単純な翻訳者:非創造的な翻訳や定型文翻訳は機械翻訳で対応可能。
- 情報集約型の基本的なライター:AI生成ツールで文章作成が容易化。
- 中間的な仲介業者:比較・照合など単純な仲介業務は自動マッチングやスマートコントラクトで代替。
これらの職種は、独創性・問題解決力・専門的知識・顧客との信頼関係構築といった付加価値を付けない限り、徐々に需要が縮小していくことが予測されます。
つまり、単純作業や定型的なタスクに従事する職種、ルーティンワークのみで付加価値を生まない職種は、AIや自動化技術に代替されていく可能性が高いと言えるでしょう。
システムエンジニアの需要は?
では、本サイトの読者が最も気になる職業であるシステムエンジニアについてはどうなるでしょうか? システムエンジニア(開発・インフラ構築)への影響と動向予測について調査した結果を下記に記載します。
- コーディング業務の変化
•背景:ChatGPTを始めとする大規模言語モデルは、ソースコード例やエラーメッセージに即応し、修正案を提示することが可能です。これにより、シンプルなプログラミングタスクは大幅に簡略化・自動化される方向へ進むと思われます。
•影響:初歩的なコーディングを行う下位工程要員は相対的な重要性が低下し、必要人数も減る可能性があります。一方で、AIが生成したコードの品質保証やアーキテクチャ設計、セキュリティ監査といった高度なスキルが求められ、エンジニアはより上流工程へシフトしていくことになるでしょう。
- インフラ構築・運用の自動化
•背景:クラウドサービス(AWS, Azure, GCPなど)の成熟に加えて、IaC(Infrastructure as Code)ツール(Terraform, Ansible, Puppetなど)の普及、そしてAIOps(AIを活用した運用自動化)の進展により、手作業によるサーバー構築やネットワーク設定が減少する方向になると思われます。
•影響:人手でのサーバー構築やチューニングが必要だった環境が標準化・自動化され、インフラエンジニアはクラウドアーキテクトやSite Reliability Engineer(SRE)といった、抽象度の高い問題解決・最適化を行うポジションへ移行するでしょう。
- 「変化への対応力」強化の必要性
• 背景:「変化できる者が生き残る」というダーウィンの言葉が示すように、既存技術の経験値のみで価値が出せる時代は終わりつつあります。
•影響:システムエンジニアは、新たなプログラミング言語、フレームワーク、AIツール、セキュリティ手法を習得し、環境変化に迅速に対応する柔軟性が求められる。単純な技術知識の蓄積ではなく、問題解決力や学習能力、ビジネス要件を理解する力がキャリア維持・成長の鍵となるでしょう。
- 上流工程への回帰と拡張
•背景:AIツールは「何をどう作るか」という実装部分を補佐するが、「何を作るべきか」「ビジネス上の価値は何か」を判断することはまだ人間の得意領域。
•影響:エンジニアは顧客や事業部門とのコミュニケーション、要件定義、アーキテクチャ設計、システム全体のセキュリティ戦略策定など、より総合的・戦略的な役割が期待されるでしょう。今後はエンジニアリングとビジネス、デザイン、セキュリティ、オペレーションの各領域をつなぐ「ハイブリッドな人材」への需要が増加していくと思われます。
これからエンジニアを目指すには?
これからシステムエンジニアを目指す方にとって、今はまさに新たなチャンスの時代といえます。技術進歩は日進月歩で、クラウドやAI、セキュリティ、DevOpsといった新領域が次々と誕生し、エンジニアに求められるスキルセットも大きく広がっています。
過去の定型作業や繰り返しタスクは自動化されつつあり、これからは「変化に対応する力」こそがエンジニアとしての大きな武器となるでしょう。
では、初心者はどのようなアプローチで学び、成長していけばよいのでしょうか。
- 基礎を固めることから始める
まずはプログラミング言語(PythonやJava、JavaScriptなど)やネットワーク、OS(LinuxやWindows)の基礎をしっかりと身につけましょう。これらはすべての応用技術を学ぶための土台となり、あとからクラウドやAI関連の領域へスムーズに進むための「足場」となります。
- クラウド、コンテナ、IaCツールへの理解を深める
現代のインフラ構築は、AWSやGCP、Azureといったクラウドサービスの活用が当たり前になりました。また、コンテナ技術(DockerやKubernetes)やTerraformなどのIaC(Infrastructure as Code)ツールに触れておくことで、従来のサーバ構築よりも高度な抽象度で環境を扱えるようになります。
- 自動化を積極的に取り入れる
今後はAIがコード提案や問題解決サポートを行うなど、開発・運用環境が飛躍的に効率化されます。初心者のうちから「何をどう自動化できるか」を考える習慣をつけることで、付加価値の高い仕事に集中できるエンジニアを目指せます。
- 学習スタイルをアップデートする
書籍やドキュメントはもちろん、オンライン講座やハンズオン、GitHubでのコード閲覧、Qiita・Zennでの情報共有、ChatGPTを用いた疑問解消など、多角的な学習リソースをフル活用しましょう。これにより、課題に直面したときの解決スピードと対応力が格段に上がります。
- ソフトスキルの習得も忘れない
今後はビジネス要件を理解し、チームメンバーやクライアントとコミュニケーションを取りながら、最適なシステムを設計・運用する力が求められます。単なる「作業者」ではなく、問題解決者としての視点を養いましょう。
なぜ?と思う方も多くいるかと思いますが、これには筆者も同感です。現在の技術は、今から約20〜30年ほど前にダウンサイジングの波と共に一斉に普及してきた技術です。運よく❓筆者はこの波に乗り次々に誕生する新たな技術を習得して現在に至っています。
時々、悩んでいる若手エンジニアに声をかけると決まって「覚える技術が多すぎる」と答えが返ってきます。筆者は技術が誕生した順番に習得していけた口なので、そこまで苦労という苦労は経験してこなかったわけですが、今の若手はこれらの技術を全て習得しなくてはなりません。覚えることが多すぎるんですよね・・・
ですが、今後はAIを始めとする技術確信がほぼその問題を代わりに引き受けてくれることになるのでしょう。エンジニアの言葉の定義が大きく変化する時代、今はまさに新たなチャンスの時代と呼ぶに相応しい、巨大な波が来ているのではないでしょうか。
参考情報
システムエンジニアの需要と将来性についての記事執筆根拠となる情報ソース源を下記に記載しておきます。だから安心ということではなく、今後も人手不足が続くことは間違いなさそうですが、このブログで挙げたスキル以外の付加価値を身につけてこその将来性だということを忘れないでください。
1.アメリカ労働統計局(BLS)の職業見通し
米国労働統計局(Bureau of Labor Statistics)のデータによれば、「ソフトウェアデベロッパー」や「システムアナリスト」を含むコンピュータおよび情報技術分野の職種は、2021年から2031年までに約15%増加する見通しがあります。これらの職種には、システムエンジニアに類するポジションも多く含まれており、平均を上回る成長率を示しています。
- ソフトウェア開発職種の雇用は2021年から2031年で約26%増(米国BLSデータ)
- 情報セキュリティアナリストは同期間で約35%増(米国BLSデータ)
これらはシステムエンジニアリングに関連するスキル(インフラ構築、システム設計、セキュリティ対策)がいずれも高い需要に支えられていることを示します。
- Occupational Outlook Handbook(OOH)
OOHでは「Software Developers」や「Information Security Analysts」などのIT関連職種の成長予測が掲載されています。具体的な増加率や期間については該当職種ページで確認可能です。
2.日本国内のIT人材需給予測(経済産業省)
経済産業省が公表した「IT人材需給に関する推計」(2019年公表)では、2030年までに日本国内で最大約79万人程度のIT人材不足が発生する可能性が指摘されています。
システムエンジニアはこのIT人材における中核的存在であり、システムインフラの整備・運用やクラウド・コンテナ技術の活用など、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支える役割が拡大しているため、こうした不足はシステムエンジニアへの需要増加を意味します。
- 「IT人材需給に関する推計」報告書(2019年)
経済産業省サイト内で公表された報告書(PDF)が入手できます。
3.グローバルなIT投資増加(IDC予測)
国際的な市場調査会社IDCの予測によると、世界のデジタルトランスフォーメーション関連支出は2021年から2026年にかけて、年平均成長率(CAGR)約16%で拡大し、2026年には**3.4兆ドル(約370兆円)**近い規模に達すると見込まれています。
この大規模投資の多くは新システム導入、既存システム刷新、セキュリティ強化、クラウド移行などに向けられ、システムエンジニアの必要性を着実に後押しすることになります。
- IDCのデジタルトランスフォーメーション関連支出予測
IDC公式サイトやプレスリリースを参照することができます。最新の予測値は年度ごとに更新されるため、以下はIDCの公式サイトおよび関連ニュースリリースです。- IDCのプレスリリース一覧ページ
(こちらで日付やキーワードで絞り込むと、類似するDX支出に関するプレスリリースが見つかる可能性があります。)
- IDCのプレスリリース一覧ページ
まとめ
参考情報に挙げた情報は、これらはいずれもシステムエンジニアを含むIT人材需要が今後なくなるどころか、むしろ拡大し続けることを示す明確な数値的裏付けです。
- 米国BLSによるIT関連職種の約15~26%前後の雇用増加率(2021~2031年)
- 経産省が示す2030年までに最大約79万人のIT人材不足(日本国内)
- IDCが予測する2026年までに3.4兆ドル規模に達するデジタルトランスフォーメーション関連支出
これからシステムエンジニアを目指す初心者が成長するためには、確かな基礎知識の上に新技術を積み重ね、かつ、自動化・効率化の視点を持ち、学習スタイルやソフトスキルを柔軟に磨いていくことが重要です。技術が日々進歩する現代だからこそ、自らも「変化できるエンジニア」になることが、これからのキャリアを切り開くカギとなりそうです。
また、現役システムエンジニアについても、コーディングやインフラ構築は自動化・支援ツールによってハードルが下がり、単純作業は減少する傾向にあります。その代わり、エンジニアは高度なアーキテクチャ設計、セキュリティ、最適化、そしてビジネス価値創出といった、「変化」や「創造性」「戦略性」を必要とする領域へシフトすることが求められるようになっていきます。
ここへきて、エンジニアという言葉定義の幅がさらに広がち、求められるスキルも大きく変化していきそうです。キャリア維持のためには、技術スキルの幅を広げるとともに、ビジネス・コミュニケーション力や学習能力といった非技術的スキルの強化が重要となってくるでしょう。